経営・戦略

2024.05.04 14:15

中華圏の女性に大人気の「三喜雑貨」。老舗アパレル企業の業態転換と覚悟

田中友梨
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「新規事業を機動的に立ち上げるために、固定的な上司と部下という関係をなくしました。新規事業の指揮を担うのは『部長』などの役職者ではなく、新規事業を企画したプロジェクト・オーナー。イントレプレナー(社内起業家)と呼んでいます」(熊谷社長)

前述の西山氏もその一人だ。イントレプレナーは、プロジェクトメンバーを社内の組織体制に縛られずに募ることができる。社内で最適の人物が見つからない場合は、社外のプロフェッショナルを充てることも可能だ。プロジェクト期間中は、勤務場所や時間などもプロジェクトに委ねられている。プロジェクトが終了すればチームは解散し、メンバーは別のプロジェクトに参画するか、自らプロジェクトを立ち上げることになる。固定的な組織は一切ないのだ。

「新規事業カンパニーでは、これまで役員や事業部長と呼ばれていたメンバーは、その肩書きを“プロデューサー”に変更しました。プロデューサーは、個別の新規事業を所管することはありません。社長である私自身もプロデューサーのひとりです」(熊谷社長)

同社では現在、名画『七人の侍』ならぬ7人のプロデューサーが議論を重ね、新規事業の推進の可否、さらに出資額や撤退基準の判断を行っている。プロジェクト発足後も、特定のプロデューサーの所管事業という考え方は取らず、7人が一致団結してプロジェクトを支援していくという。

「巨大資本のように『確実に、効率的に、たくさん売ること』ではなく、私たちはブランドの魅力をこれまでにない切り口で伝えていきたい。『熱狂的なファン』を生み出すことを最重視して、新たな事業を生み出していきます」(熊谷社長)

文=下矢一良

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